■た行
滝の白糸【たきのしらいと】

 大衆演劇の定番演目。原作は泉鏡花の小説「義血侠血(ぎけつきょうけつ)」。
 女水芸師の白糸は法律家を目指す苦学生・村越欣也に好意を持ち、学資を援助する。おかげで欣也は進学できたのだが、金の工面に窮した白糸はとうとう人を殺めてしまう。逮捕された白糸は法廷に立つが、その検事席には検事となった欣也の姿。欣也は涙をのんで死刑を求刑し、その直後自ら命を絶つノ。
 男女の残酷な運命の綾(あや)、緊迫の法廷場面、白糸の水芸など見どころの多い芝居ゆえ、戦前戦後を通じ、何度も舞台化・映画化されている。特に扇子や刀、衣装から本水が飛び出す水芸場面は、大衆演劇ならではの「けれん」味が存分に発揮されることもあって、人気の高い演目となっている。

長七郎江戸日記【ちょうしちろうえどにっき】

 テレビで有名な時代劇を脚色したもの。
 佐太郎と恋仲の芸者お滝、小鈴は小平衛親分の誕生日を祝うために集まるが、親分はお滝に結婚を迫り、強引に奪ってしまう。それを知った佐太郎は小平衛に刃向かい、親分子分の盃を水にされる。佐太郎は一人旅に出るが、行きがけに小鈴と出会う。実は佐太郎に惚れていた小鈴は一緒に連れてってくれと頼むが、佐太郎は冷たくあしらう。
 ところで恋仲の佐太郎の子分・三太郎とお花は、親の許しも得て一緒になろうとしていたところ、お花を見初めた代官の使いの小平衛が現れ、お花の母を斬り、お花を連れ去る。かわいい子分の一大事を知って、佐太郎は小平衛のもとへ走る。事情を知った長七郎(松平長七郎長頼)もかけつけ、小平衛を斬る。お花は無事、三太郎のもとへ。
 そして佐太郎は、長七郎の「小鈴と一緒になるなら、人を殺めた罪は問わないで置こう」の言葉に従い、小鈴を連れて旅に出るノ。


妻吉物語【つまきちものがたり】

 実際にあった「堀江六人斬り事件」と、その犯人の娘である舞妓・妻吉が書いた『妻吉自叙伝堀江物語』 をもとにした悲劇。かつて映画化もされた。
 妻吉は堀江遊郭に住む17歳の舞妓。母は若い男と浮気をし、家を出てしまう。残された父は頭がおかしくなり、刀を振り回して人々を惨殺する、いわゆる「堀江六人斬り事件」を起こす。 妻吉も両腕を斬り落とされたが、かろうじてただ一人助かる。その後、妻吉は自分と父を捨てた母親を憎みながら舞妓をしていたが、ある日、みすぼらしい老女を見かける。その老女こそ、変わり果てた母の姿だった。涙ながらに謝る母を見た妻吉は、母を許し、共に生きようと決意するのだった。


天保水滸伝【てんぽうすいこでん】

 浪曲や講談で有名な「天保水滸伝」は、土地を潤す利根川と共に、昔から語り伝えられてきた東庄が舞台の、笹川繁蔵と飯岡助五郎、二人の侠客の勢力争いの物語である。国定忠治や平手造酒など大物が話に登場することもあって、座長大会などでよく披露される演目である。
 天保のころ。大利根川を挟んで、飯岡助五郎一家と笹川繁蔵一家が対立していた。助五郎は何かことを起こして笹川一家を叩きつぶそうと考えていた。代貸の政吉は無用な小競り合いで、飯岡一家が笑い者にならないかと気を揉んでいたが、助五郎はそれが気に入らなかった。ある日、笹川一家が親分衆を集めて花会を開くことになったが、助五郎から渡された祝儀の金は五両しかなかった。政吉が悄然として家に帰ると、家財道具一切がなくなっていた。笹川繁蔵の妹である女房のおしげが噂を聞いて、家財一切を売り払って金を作ってくれたのである。だが、それを足しても十両そこそこ。しかし繁蔵はそれを花会の席で「合計七十五両」と披露し、政吉の立場は救われた。
 しばらくして、政吉一家と笹川一家は大利根川を挟んで出入りとなる。平手造酒は病気にもかかわらず、笹川一家の助っ人として出向く。大乱闘の果てに、義理に縛られた政吉は命を落とす。

天竜いかだ流し【てんりゅういかだながし】

 やくざの一家・桔梗家(ききょうや)の親分・正五郎亡きあと、旅に出ていた佐太郎が二代目を継ぐことになった。それは折しも、親分の命を取った仇・草津の大五郎との、檜山の競りが近い日だった。佐太郎は政吉に全財産である三百両を持たせ、競りに行かせる。しかしたった三百両では檜山を落とせるわけもない。佐太郎は情けない自分を責めて自害しようとするが、そこに親分の娘が現れ、これを使ってくれと千両の金を渡す。千三百両を抱えて山に走る佐太郎。果たして競りは間に合うのかノ。

唐人お吉【とうじんおきち】

 幕末開国の犠牲者お吉こと斉藤きちの哀しい一生を描いた悲劇。
 お吉は「新内お吉」ともてはやされるほど人気があった下田の芸者。船大工の鶴松と一生を誓い合った仲であったが、アメリカ総領事ハリスの侍妾となり、その一生は激変した。やがてハリスは帰国し、残されたお吉は「唐人お吉」などと呼ばれ迫害される。その後、鶴松と一緒になり髪結業を行ったり、小料理屋を開いたりするもののうまくいかず、乞食となり、最期は非業の投身自殺を遂げる。

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