■さ行


・ 桟敷席【さじきせき】
基本的には劇場の客席上手前方にある一等席=特別席(関西の大衆演劇場では下手側・花道の横にある)。畳敷きのところと板敷きのところがある。もちろん一般席より割高で、追加料金が必要となるが、予約できる場合が多いので、確実にゆったり観劇したい場合には最適の席である。なお「桟敷」の語源は「さずき」(=仮に作った床)という言葉から来ていると言われている。ちなみに江戸時代の芝居小屋は土間の左右に上下2段の桟敷席を構えていた。

・ 座長【ざちょう】
劇団の団長。一座の長。一番人気の看板役者でもあると同時に、毎日上演する芝居やショーの脚本・演出・殺陣・舞踊の振付・音楽の選曲をこなす。また太夫元(総責任者)を兼ねると、巡業先の決定、給料の支払いなど、運営のすべてをやりくりすることになる。大衆演劇の世界に飛び込んだ役者なら、誰しも一度は夢見るポジションだが、実際は企画力・統率力・資金力・体力・精神力のすべてが要求される過酷な役回りなのである。

・ 座長大会【ざちょうたいかい】
各劇団の座長が集結して行う特別公演。大きく分けて、協会や劇団が主催するものと、劇場・センターが主催するものがある。協会・劇団主催の場合は、旗揚げ記念・襲名記念・劇団創立○周年記念など、劇場・センター主催ではこけら落とし・開設○周年記念などがあるが、他に定期的な座長大会もある。各劇団の座長が一同に集まり芸を競い合う公演だけに、観劇料は通常の公演より割高となるが、看板役者がずらりとそろった舞台は壮観で、芝居もショーも見応えがある。

・ 三番叟【さんばそう】
正月興行や祝いの席によく行われる舞。元は能の「式三番」(翁)で、「千歳」(せんざい)、「翁」に次いで三番目に「黒式面の翁」が扇と神楽鈴を持って舞うことから「三番叟」と言われた。これが 歌舞伎や人形浄瑠璃に取り入れられ、幕開けの祝儀として舞われるようになった。大衆演劇でもそれを踏襲していると思われる。また新年に舞うのは、その年の芝居の大入り祈願を込めた儀式的な意味合いもある。

・ 三枚目【さんまいめ】
こっけいな演技で観客を笑わせる役で、この役が看板の三枚目に揚げられたことから、この呼び名がある。




・ 地方【じかた】
お囃子(はやし=音楽)のこと。昔は実際に楽器を演奏していた人がいたのでその人たちをこう呼んでいたが、現在、大衆演劇では演奏者がいないので、あまりこの言葉を使わなくなった。ちなみに地方に対し、舞台の上で踊る役者は「立ち方」と呼ばれていた。

・ シケ【しけ】
結った髪からパラリと出たほつれ毛のこと。役者の好みによってさまざまな出し方があり、本数が多いと色っぽい感じになる。また、お姫様が耳のところから胸に垂らした髪も「シケ」と呼ぶようである。

・ 下座【したざ】
座長大会で、主催者的な役割りを果たす劇団。(→「座長大会」)  

・ 十手持ち【じってもち】
岡っ引き、同心、目明かしなど、江戸時代に町奉行の与力や同心に私的に雇われ、その手先となって犯罪人の捜査・逮捕に従事した者の俗称。

・ 指定席【していせき】
劇場やセンターで観劇する際に、あらかじめ予約できる席のこと。電話で予約できるところと、直接劇場・センターでのみ受け付けているところがある。予約できる施設は『演劇グラフ』の「公演案内」に「予約席あり」と記載してあるので、観劇の際には参考にしていただきたい。(→「センター」、9月号「劇場」参照)

・ 島流し【しまながし】
罪人に対する刑罰。島送り、遠島、流罪、流刑とも言う。「島」とは佐渡ヶ島、八丈島、鬼界島などを言う。ちなみに「島帰り」とは、島流しの刑期を終えて帰ってきた人のこと。 「島抜け」とは、島流しにされた島から脱走すること。

・ 下手【しもて】
客席から舞台に向かって左手。西側ともいう。 上手の反対。

・ 尺【しゃく】
尺貫法における長さの単位。1尺は10寸=30.3センチ。

・ 襲名【しゅうめい】
役者がその一座の代々の芸名を継ぐこと。座長が先代の名を継ぐ場合が多いが、まれに家が違う先人の名跡を継ぐこともある。血筋はつながっていなくても、名前養子となってその名を継ぎ、その一座の芸を継続する場合もある。また「座長襲名」とは座長になることで、その際に芸名を変える場合も、変えない場合もある。

・ 襲名披露公演【しゅうめいひろうこうえん】
主に座長を襲名した役者が、座長として初めてお披露目をする公演のこと。親しい劇団や劇場など関係者からお祝いの花輪が飾られ、場合によってはゲスト出演もあるなど、通常の公演よりも華やかな舞台となる。

・ 繻子【しゅす】
着物の襟(えり)にかける光沢のある黒い布。とても粋な感じがするもので、江戸時代後期の町芸者から始まった流行とされている。最初は汚れが目立たないなどの実用性からつけていたが、やがて一般にも定着した。

・ ショー【しょう】
芝居以外の演目のこと。内容は舞踊や歌、ミュージカル風なものもここに含まれる。現在、ほとんどの劇団は芝居とショーの2部構成という形式で興行している。贔屓(ひいき)の役者の女形姿や華麗な踊り、歌が観られるのはこのショー部分である。(→「センター」)

・ 常打ち【じょううち】
毎月、大衆演劇を上演している劇場・センターのこと。『演劇グラフ』の「公演案内」では、常打ちと不定期の施設を区別して掲載している。(→「センター」、9月号「劇場」参照)

・ 定式幕【じょうしきまく】
緞帳(どんちょう)のすぐ後ろの引幕。黒、柿色、萌葱(もえぎ)色の3色縦縞。多くの劇場では、下手から上手に開け、上手から下手に閉めるようになっている(地方により異なる)。人によっては「歌舞伎幕」とも呼ぶ。

・ 照明【しょうめい】
大衆演劇では「投光」と呼ばれることが多い。各劇団には必ず投光係がいて、役者が兼ねる場合もある。照明の当て方一つで役者の見え方が全く異なるので、どの劇団でも力を入れているパートである。客席の後ろから舞台に向けて強い光を放っているものを「スポットライト」、役者が踊っている舞台の後ろに花柄や月や模様を映す機械を「マットスキャン」と呼ぶ。最近ではレーザー光線を使った照明などもあり、かなり凝った光による演出がなされている。劇場によっては、劇場付きの投光係が担当する場合もある。

・ 証文【しょうもん】
芝居でよく使われる小道具で、半紙に書かれていることが多い。よく使われるのは、女郎屋が娘を買ったときの身請け証文、金貸しが金を貸したときの借用証文の二種。

・ 所作【しょさ】
元来は動作、身のこなし、といった意味を持つ言葉。そこから歌舞伎では舞踊、あるいは舞踊劇を所作事(しょさごと)というようになった。大衆演劇でもそれを踏襲している。

・ 初代【しょだい】
芸名が何代にも渡って受け継がれる場合、その名を最初に名乗った役者をいう。また「初代座長」とは、その劇団の最初の座長を指す。

・ 初日【しょにち】
一つの劇場・センターにおける最初の公演日。(→「千秋楽」)

・ 序幕【じょまく】
芝居の最初の場。第一景。

・ 女優【じょゆう】
歌舞伎から発生したという事情から、大衆演劇の役者は現在も男性中心であり、人気が集まるのも男性役者になりがち。さらに女性役者は役者として以外にも着付けや料理など、裏方としての仕事も多いが、そうしたハンデにも負けず、素晴らしい活躍をしている女優もまた多い。

・ 女郎【じょろう】
遊郭で、遊客に色を売る女。遊女、娼妓(しょうぎ)とも言う。 また「女郎屋」とは、女郎を抱え、客を取らせて商売している店のこと。 「岡場所」とも言う。

・ 白州【しらす】
江戸時代、奉行所の裁きを受ける庶民が控えた場所。もともとは邸宅の玄関先や庭園などで、白い砂や小石の敷いてある所のことで、奉行所の庭に白い砂利が敷かれていたところからこの名前がある。

・ 白装束【しろしょうぞく】
上下ともに白い衣服。またはそれを着た状態。神事や凶事の際に用いるが、大衆演劇で多いのは切腹や罪人が裁きを受けるお白州の場面である。(→9月号「白州」参照)

・ 白塗り【しろぬり】
役者が白粉で顔を白く塗ること。これで地塗りをし、その後、顔を描き上げるので、化粧の一番ベーシックな部分である。(→9月号「化粧」参照)

・ 新劇【しんげき】
日露戦争(明治37年=1904年)前後に発生した演劇スタイル。歌舞伎(=旧劇)に対して西洋の近代劇を取り入れた劇で、島村抱月・坪内逍遥が設立した「文芸協会」、島村抱月・松井須磨子の「芸術座」、小山内薫・二代目市川左団次の「自由劇場」などが主な劇団。シェイクスピアなどの西洋劇、翻訳劇を上演し、明治末まで盛んであった。どちらかといえばインテリ層に受け入れられたので、歌舞伎や節劇、新派などに比べて大衆演劇への直接的影響度は一見低いようにも思えるが、芝居における時間経過や省略など、現在の大衆演劇にとっての影響は少なくない。

・ 新国劇【しんこくげき】
大正6(1917)年、沢田正二郎により、歌舞伎と新劇との中間に位置する新しい国民演劇の創造を目指して結成された劇団。剣劇と大衆劇を中心に、島田正吾・辰巳柳太郎らが活躍し、昭和62(1987)年まで活動した。大正8(1919)年には、それまで歌舞伎などで流麗な立ち回りとして表現されていた刀での斬り合い=殺陣(たて)を、リアルで壮絶な斬り合いとして舞台で見せ、観客から大喝采を浴びた。これが剣劇の始まりとされており、現在の大衆演劇のルーツのひとつとされている。また「国定忠治」など当時の演目自体も、わかりやすい勧善懲悪の物語が多く、それらも現在の大衆演劇にも受け継がれている。

・ 新派【しんぱ】
日本演劇のジャンルの一つ。明治21(1888)年、自由党の壮士・角藤定憲(すどうさだのり)らが大阪で旗揚げしたのに始まり、川上音二郎を中心とする壮士芝居を経て発展し、現在に至る。当代の風俗・人情・世相に取材したものが多く、歌舞伎と新劇との中間の位置を占める。「新派」の名称は、明治30年代にジャーナリズムが便宜的に歌舞伎を「旧派」、新しい演劇を「新派」と呼んだことに始まる。代表的な芝居は「金色夜叉」「婦系図」など。ただ大衆演劇においては、明治ものや現代ものの芝居を時代劇と区別して言う場合が多い。




・ 裾引き【すそひき】
女形のときに着る着物で、裾が綿のように長く広がっているもの。見た目の華麗さゆえ、舞踊ショーでは定番の着物である。

・ 墨肉【すにく】
入れ墨柄の入った襦袢(じゅばん)のこと。一見、入れ墨をしているように見える役者はこれを着用している。舞台衣装店で売られているが、彫り師自体が激減している現在、墨肉の入れ墨を描ける人間もかなり少なくなっている。

・ 簀の子【すのこ】 
舞台の天井のことで、簀の子張り(関西地方では昔は竹の格子組)になっているところから来た名称。簀の子には吊物昇降装置の一部が設置されている。また、簀の子の下に仮設の吊物などを設置する作業床を持つ形式の簀の子もあり、それを「二重簀の子」という。




・ 世話物【せわもの】
浄瑠璃・歌舞伎で、主として江戸時代の町人社会を舞台に、義理・人情・恋愛や種々の葛藤(かっとう)を主題としたもの。

・ 銭【せん】
貨幣の単位。一銭=一文=二五〇文。(8月号「貨幣」の項参照)

・ 線香【せんこう】
線香代の略。女郎や芸妓を囲う代金。また、「線香を焚(た)く」「線香を付ける」といえば、女郎や芸妓を囲うこと。もともと、線香が燃え尽きる時間を単位に課金していたところから来ている。 (→「女郎」)

・ 千秋楽【せんしゅうらく】
一つの劇場・センターにおいて興行が終わること、またその最終日をいう。「楽」「楽日」と略すこともある。(→「初日」)

・ センター【せんたあ】
大衆演劇を上演する施設のうち、健康ランド・ホテル・旅館など、劇場以外の場所のこと。ほとんどの劇場が一日2回公演であるのに対し、センターは昼のみ公演というところも多い。またセンターによっては、芝居は昼の部のみで、夜はショーのみという所もあるので、観劇の際には電話での確認をお勧めする。
(→「ショー」)

・ 千両役者【せんりょうやくしゃ】
人気と実力を兼ね備えた役者のこと。語源は、江戸時代に年収が千両を超えた役者のことを指したところからきている。



・ 袖【そで】
客席から見えない舞台の上手や下手、あるいはその空間をいう。

・ 袖幕【そでまく】
袖に吊る黒幕。客席から袖の中が見えないようにするために吊る。

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